2011年12月06日

Kosh_Hollywood dreamin'


さてリンダのノスタルジア連作を紹介したところでやっとこの「隠し球」を紹介できるというもの。これぞジョン・コッシュの最高傑作
72年というからリンダ連作から遡ること10年、渡米前で Who / Family などのジャケをやっていた頃のこと。この時にすでに最高傑作をモノにしていたコッシュなのであった…。

UK United Artists Records が企画したのがズバリ、
【The Golden Age of Hollywood Musical】

1930年代のハリウッドミュージカル全盛時、そのサントラ楽曲集というのだからコッシュがやらずにどうする。
というか、この時点で「この企画盤ならジャケはコッシュだワ」とUA側が気づいていたのか? それともどこからか聞きつけたコッシュが「おいおい! そりゃオレだろう〜!」と売り込んだのか…。

まあ経緯は何であれ、コッシュがもっともやりたいジャケが舞い込んだ。のみならず、ここでも運があるのか…いや、実力ですわね…ビートルズ、ストーンズ、フーのジャケを既にやっていたコッシュだよ、何の文句があろうことか…思う存分なジャケを作ることができた。(コッシュ的には、B4/ストーンズ/フー…意にそぐわぬ二流バンド℃d事をステップに…研鑽を積んでここまで来た??)

それにしてもこれだけの複雑な「抜き型」に金がかかっただろうに、売れたのか? ペイしたのだろうかと老婆心ながら心配になるようなジャケット・デザイン。
なにしろワタシはこのLP…中古エサ箱で発見した時は涙し、その価格¥300に再び涙したのだ。セコハンレコ屋の兄さん、「あ〜たこの駄盤をお買い上げになる!? これはまあ見上げたモンだ、いよっ、篤志家!」と顔に書いてあった。彼は仕入れてからジャケを開いてみてもないだろう…。
池袋にて出会えた、ああ傑作レコード。


kosh_holly_cover.jpg

kosh_holly_inside.jpg

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30cm四方のレコード寸法が片6面、両で12面分が全体寸法。右の表裏4面分はポップアップ仕様のために別紙。8面紙とそれを糊貼りしている。
カラーなどという愚はせず、映画の時代に合わせてモノ・トーン/表ジャケ部分のみスミ+特1色で。
二枚の貼り合わせだが形状は一枚紙、それを折り込むだけのシンプルジャケが、これだけの立体感…いや「感」ではなくて実際に「立体」…それも半端じゃない立体なのだから。凄い。
表だけを見れば(デザイン処理はともかく)何ということはないアルバム。それがまず開いてみると飛び出す!=c往時の名作ミュージカルの有名シーンが3Dとして眼前に表れる仕様に驚き、さらに広げれば数々のスチルとともに詳細を記したインナーがこれでもかと出てくるわけで…。
これだけ完成度の高いレコードジャケットをワタシは知らない。
デザインにしろギミックにしろ半端がまったくないのだから。ギミックは…たいていがいたずら心からだが、ここでは必然…すべてが真摯なるオマージュ、コッシュの「愛情」がなせる技。真の傑作とはこういうジャケットなのでアリマス。

PS:このレコードを初めてみたのは(写真だが)、レコードジャケット・デザイン界の巨星コンセプト・チーム『ヒプノシス』、彼らが編纂した名著【album cover album】の第一集で。しかしそこでは5cm四方の表ジャケのみ、コッシュ作とはあったがさほど注意を引く扱いではないし、実際ワタシもほとんど気にしなかった。
が、中は凄いことになっていた…それを教えてもらえたのが、前に紹介した沼辺信一さんによる【12インチのギャラリー】。お世話サマデス。





kosh_holly_2nd.jpg


UA Records は三年おいて再度企画した。
【Hooray for Hollywood】
第二集ということで、もちろんコッシュ・デザイン。
今回は(前回が懲りすぎた?)…変形無しのシングルジャケ。
ただしブックレットが16ページのボリューム。スチル満載。
スミ+特銀色刷りジャケット。クオリティは前作に引けを取らない。





posted by Denny_O at 20:36| Comment(2) | TrackBack(0) | kosh | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月05日

Kosh_Nostalgic Linda


映画フリークであろうコッシュはなぜ本編へ行かずにグラフィックワークを選んだのかと前に書いた。が、なんとなく分かる気が今はしている。
60年代末…アメリカ映画はニューシネマが始まりだした/ロー・バジェットなロードムービー…英国人コッシュとはいえその眼はアメリカを向いていただろうから、もう自分の望むような豪華絢爛な映画の時代ではないと早々に悟った…のでは。
物はあふれ、大型車は湯水のようにガスを食らい、それでも石油が枯れるなどとは微塵も感じていなかっただろうアメリカ社会の、その象徴ともいえるハリウッドミュージカル映画の数々…まさに夢の世界に魅せられていた青年コッシュにとって飛び込むべき映画界は存在していなかったんじゃないのかな。

しかし想い絶ちがたし。グラフィックな世界へ進んだとて、そのモチーフはやはり「映画」であった…というのがワタシのコッシュ感。
コッシュはつくづく運がいいと思う。アメリカへ導いてくれたピーター・アッシャー、そのアッシャーが振ってくれたリンダ・ロンシュタット仕事、そのリンダは大きくブレイク。のみならずリンダが路線変更した先というのが何より望んでいたノスタルジックワールド… Hollywood Golden Age の音楽というのだから。

コッシュはグラミー賞「ベスト・アルバムデザイン」を二度獲っている。ともにリンダ盤。最初は83年(受賞年)の【get closer】だがこちらは不本意だったんじゃないかな。86年の【lush life】、これでこそ本望であったろう。

ネルソン・リドル…まあかなり古い人ゆえ正直当時は知る名前じゃなかった、なんでもシナトラやディーン・マーチン等ハリウッドな人らのバックをしていた、オーケストラ界では大御所/巨匠なんでござんしょ? 知る人は、おおあのリドルがリンダとコラボしたのかと驚いたのだろう。
ピーター・アッシャーのプロデュースで、ネルソン・リドル・オーケストラと組んでのスタンダード歌曲集三連作を発表。

【what's new】(83)

linda_whats.jpg

linda_wats_label.jpg
レーベルもサテン地を…

【lush life】(84)

linda_lushlife.jpg


【for sentimental reasons】(86)

linda_reasons.jpg



見よ、このジャケを。嬉しさに涙チョチョ切れながら仕事したのが見えるよう^^、コッシュ会心の作。

とはいいながら、コッシュ・デザインとしては認めても/リンダは贔屓シンガーであっても、このスタンダード連作はワタシの趣味ではなかった。ので、今手元にあるのは変形ジャケというだけで買った二作目のみ。
一、三作は手にしたことがないのでジャケ仕様が分かっていないのだ。変形…は無かったよなぁ?


※【lush life】、ハット・ケースとでも言うのだろうか、「帽子入れ」をまま模したジャケット。これだけゴージャスなケースに入れる帽子って…お高いでしょうなあ。まあ思うのはハリウッド女優御用達…。そのフタが取れる…開けるとなかにリンダ、というコンセプト。
ついでに過去に書いた「粗いブラシ」に関してビデオを入れておく。(注:ブラシとは、イラストを描く技法のひとつ、エアブラシのこと)





posted by Denny_O at 06:34| Comment(2) | TrackBack(0) | kosh | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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