前回の「カラスを石持て追え」のジャケ。よくよく眺めればコッシュの基本モチーフたる「アールデコ」、とくに扉…、ではあるね。
+++++++

エアブラシイラストとコッシュといえばこの盤を挙げないわけにはいかない。
この75年盤、コッシュの名前に気付いた/意識し始めたのはこの頃。リンダ・ロンシュタット、イーグルス、これ…当時新譜として買うレコに毎回出てきたのがコッシュの名前。
rod stewart - atlantic crossing ('75)
内容の素晴らしさについてはもう語り尽くしているのでジャケについて。
見開かねば意味をなさない。裏ジャケにあたる左半分が英国:大型船舶はクィーンエリザベス号?、うっすらと透けて見えるは霧にけむる Big Ben 。その上に見えるのは故郷スコットランド国旗。
スコティッシュ・ロッドが「大西洋横断」して右半分の米国へと旅立つ姿を描いた傑作。Take a Giant Step... 大きくデフォルメした右足で踏み入れるのが亜米利加のシンボル=摩天楼ビル群。いざ鎌倉…ならぬ「いざ亜米利加」。それでも酒瓶とサッカーボール(ロッドはサッカーなんて言葉を知らないだろう。フットボール。するとこれはフットボールボール?)は放さず。
アナログサイズで31×62cm。原画はまあ倍まではないにしても50×100cm程度の大作じゃなかったかな。ひとつひとつ細かくマスキングしてブラシ吹いて…それでも全体のバランスを崩さず(吹いたらそれまでなのでデジタルのように修正は効かなかった)描き上げる技はまさに職人、匠の世界。ブラシ名人のひとり、ピーター・ロイド (Peter Lloyd) 作。
クレジットでは cover prepared by AGI, Hollywood : design & art direction by John Kosh
75年はピーター・アッシャーを追って(たぶん)、ロスへと…つまりコッシュもロッドとともにAtlantic Crossing≠オたわけで。その意味でも本人にも思い出深いジャケだろう。ロスへ渡ってきてそうそうにコッシュは AGI (Album Graphic, Inc. ) のクリエイティヴディレクターに迎入れられた。全米をネットする最大の音楽デザイン会社。
このジャケに関してはコッシュの suggestion がそうとうに活かされているだろう。ストーン・ザ・クロウズと違ってブラシ画は名人に任せたことで、コッシュ+ロイドで傑作が誕生した。コッシュの代表作のひとつ。
蛇足:ピーター・ロイドのイラスト盤。ジェファーソン・スターシップ/ドラゴンフライ、カンザス、チェンバー・ブラザーズ etc 。