

コッシュにとって「Hollywood がもっともハリウッドらしかった頃の映画」こそがコッシュ・デザインの肝であり、幹であったと思う。(実際コッシュはその最高傑作をハリウッド映画のサントラ盤で実現している。それは後述)
ならばなぜダイレクトに映像仕事へ向かわなかったのかは知るよしもないが、“固定したイメージ”への想い、グラフィックワークとしての作品に懸ける気持ちは強く伝わってくる。
正方形という制約上やむを得なかった、横長にはできないがコッシュの中では枠をつけたのではなくて、あえて一回り小さい版面を設定した、それは“スクリーン”を意識したのでは。
ジャケットデザインとは音楽が醸す映像からワンシーンを切り取ること、スクリーンショットを作ることを肝に銘じて制作に勤しんでいたのだと思うのだが…どうでしょう。ある意味“非日常の、夢の世界の一コマ”を作り出していた…。
本人は「音楽という名の映画制作現場のスチールカメラマン」という意識であった、とワタシは思っているのです。そのジャケは Still Life 。
顔を背けるヒロイン…不倫か悲恋モノか…、なんらかのストーリーを思わずにはいられない設定。
主人公(ビッシュ)に当たる光量の多さがヒロインに当たらないことからして、ふたりの立ち位置は不自然。たぶん一発撮り写真ではないだろう。後でエアブラシ処理というのもありえるが、女(ヒロイン)側の暗く深いシャドウはやはりライティングによるものだろう。なのでビッシュとは別撮りで、合成処理をしたのだと思う。もしかしたらバックも別撮りの三枚合成かもしれない。
裏はカラーで主人公横顔。若干下向きが表写真との関連を匂わせる。

REO Speedwagon/Hi Infidelity ('80)
(それにしてもコッシュのデザインした全米トップ10アルバムはいったい何枚あることか…。その数は、羨望を越えて唖然とさせられる)
都会の夜に下着姿の女がルージュをひく…わりにはさほどエロチシズムを感じさせないのは男がまさにかけようとするレコードのプレイヤーと脇のライトスタンドがもろに 50's Style ゆえエロよりもノスタルジアな印象強し。コッシュ趣味。