72年というからリンダ連作から遡ること10年、渡米前で Who / Family などのジャケをやっていた頃のこと。この時にすでに最高傑作をモノにしていたコッシュなのであった…。
【The Golden Age of Hollywood Musical】
というか、この時点で「この企画盤ならジャケはコッシュだワ」とUA側が気づいていたのか? それともどこからか聞きつけたコッシュが「おいおい! そりゃオレだろう〜!」と売り込んだのか…。
なにしろワタシはこのLP…中古エサ箱で発見した時は涙し、その価格¥300に再び涙したのだ。セコハンレコ屋の兄さん、「あ〜たこの駄盤をお買い上げになる!? これはまあ見上げたモンだ、いよっ、篤志家!」と顔に書いてあった。彼は仕入れてからジャケを開いてみてもないだろう…。
池袋にて出会えた、ああ傑作レコード。



カラーなどという愚はせず、映画の時代に合わせてモノ・トーン/表ジャケ部分のみスミ+特1色で。
二枚の貼り合わせだが形状は一枚紙、それを折り込むだけのシンプルジャケが、これだけの立体感…いや「感」ではなくて実際に「立体」…それも半端じゃない立体なのだから。凄い。
表だけを見れば(デザイン処理はともかく)何ということはないアルバム。それがまず開いてみると飛び出す!=c往時の名作ミュージカルの有名シーンが3Dとして眼前に表れる仕様に驚き、さらに広げれば数々のスチルとともに詳細を記したインナーがこれでもかと出てくるわけで…。
これだけ完成度の高いレコードジャケットをワタシは知らない。
デザインにしろギミックにしろ半端がまったくないのだから。ギミックは…たいていがいたずら心からだが、ここでは必然…すべてが真摯なるオマージュ、コッシュの「愛情」がなせる技。真の傑作とはこういうジャケットなのでアリマス。
が、中は凄いことになっていた…それを教えてもらえたのが、前に紹介した沼辺信一さんによる【12インチのギャラリー】。お世話サマデス。

【Hooray for Hollywood】
第二集ということで、もちろんコッシュ・デザイン。
今回は(前回が懲りすぎた?)…変形無しのシングルジャケ。
ただしブックレットが16ページのボリューム。スチル満載。
スミ+特銀色刷りジャケット。クオリティは前作に引けを取らない。
このジャケットを初めて「広げた」ときの驚きといったら! それはもう筆舌に尽くせぬ衝撃でした。こんなことまでできるのか、とね。往年のバズビー・バークリー振付のミュージカル映画へのオマージュ、というか、物狂おしいまでの愛(むしろ嫉妬か)をひしひし感じます。
それにしても300円とは! これこそ値千金のアルバムなのにね。第二集も好きです。いかにも「銀幕」という雰囲気の渋くてゴージャスな色調が。
コッシュについてはいろいろ不明な点が多くて、このアルバムを任された経緯も皆目わかりません。UAには凄い慧眼のディレクターがいたのでしょうか。いきさつを知りたいものですね。
そうそう! 第二集はまさに銀幕≠ナした!
しかし往時のミュージカル、完全なマスゲームですね。
北朝鮮がやると不気味…なのにハリウッドなら拍手喝采、一糸乱れぬ統一性に言いしれぬ躍動感と夢の創生があったことがちょっと不思議な感じです。
まあ片や軍靴の響きですが、ハリウッドはプロフェッショナリズムという違いでしょうか。
プロがプロらしかった、大人のためのエンタテインメントが成立していた時代…子供相手にしかエンタテインメントがなくなるなんていったいどういう時代変化なんでしょうねえ、頭かかえてしまいます。